HSP気質で6回転職しながら、営業を中心に仕事を経験してきました。毎月のノルマや見込み管理が回ってくるたびに、まわりより強く消耗してきた自覚があります。長いあいだ、自分は数字に弱いのだと思っていました。ただ、いま振り返ると、ノルマで消耗する理由は、数字を管理する力の不足ではありません。確定していないものを軸にして話が進んでいく流れに、ずっと違和感があります。

- 営業のノルマや見込み管理に、人一倍の負荷を感じるHSPの方
- 「見込みは何件?」と聞かれる場面が、どうにも落ち着かない方
- 数字が苦手なのは能力不足だ、と感じている方
これは「できない」「苦手」という話ではありません。やれてはいるけれど、腑に落ちないまま進んでいる、という感覚のほうが近いと思います。
この記事のポイント
【消耗の原因】数字を管理する力の不足ではなく、不確かなものを軸に話が進む流れへの違和感
【違和感の中身】見込み・確度・失注理由は、どれも確定していないものの上に、さらに先を組み立てる作業
【気質との関係】深く考える気質だと、仮の数字から「こうなったら」を考え始めて、途中でやめられない
HSP(Highly Sensitive Person)は、物事を深く処理し、細かな差に気づきやすい気質とされています(参考:アーロン博士の公式サイト)。この気質が、確率でまとめて先を組み立てる管理の仕方と、私の場合はいくつかの場面でぶつかります。
ノルマに向けた見込みを立てる時点から、私には違和感がある
見込みの数字を、勘や願望で置いているわけではありません。見込みを立てるときは、次のような材料を見ていきます。
- 【商談の段階】どこまで話が進んだか
- 【先方の社内】検討がどこまで上がっているか
- 【ヒアリング】聞き取った予算や導入時期
こうした材料をたどれば、見込みの数字は立てられます。実際、私もそうやって立ててきました。
それでも、整理した数字を眺めながら、「これは本当に見込みと呼べるのだろうか」と思います。ステータスに沿って並べた結果ではあるものの、目の前の案件の実態と重なっている確信までは持てません。作業としては成立していても、中身が伴っているかどうかは別の話です。引っかかりは、立てているその時点からあります。
立てた見込みが、そのままノルマの会話の土台になる
毎月のノルマがある以上、そこから逆算して見込みを作らないといけません。どこまで精緻かは別として、案件をリストとして挙げる必要があります。見込みは、あくまで見込みです。それでも組織では、その数字をベースにして次の話が始まり、足りないならどう動くか、どこをどう展開していくかを、その場で詰めることになります。
もちろん、足りない分をどう埋めるか詰めることは、営業として当然の仕事です。ただ、最初に整理した数字への引っかかりを抱えたまま、確定していないものを土台にして先の行動が積み上がっていきます。
やること自体はできても、腑に落ちないまま話を進めている、という感覚が残ります。
なぜ私は、仮の数字を仮のまま置いておけないのか
まわりは、仮の数字を仮のまま気にせず進んでいるように見えます。同じ場にいて自分だけが引っかかる理由には、HSPの特性を知って少し説明がつきました。
HSPには、物事を深く処理する傾向があるとされています。その気質だと、目の前の話だけでなく「その前提はどこまで確かなのか」まで同時に処理してしまうのかもしれません。仮のものを仮のまま脇に置いて先へ進む、という割り切りに、いまも慣れていません。
確度50%と70%の差が、私には正直わからない
確度の話も同じです。この案件は50%、こちらは70%と置いてはみるものの、50%と70%がどれくらい違うのか、私には本当のところが分かりません。そんなに違うだろうか、と思ってしまうのが本音です。もっと言えば、確度が高いと見ていた案件が決まらないことも普通にあります。逆も珍しくありません。
だから、数字の差に意味を持たせて語る場面では、いつも小さな引っかかりが残ります。正直なんとも言えないよな、という感覚が自分の中から消えません。
精度を上げていくのが営業力だ、という見方に私も異論はない
その精度を上げていくことこそ営業力だ、と言われれば、たしかにそのとおりだと思います。目の前のお客様の確度を上げていくところまで含めて営業の仕事ですし、組織として見込み確度の精度を上げていくことも、体制づくりとして重要な仕事です。精度が甘いなら仕組みや営業力に課題がある、と捉える見方も理解はできます。
それでも、確度の数字も、やはりあくまで見込みです。不確定な要素を持った仮定の話を積み上げていく流れに、ずっと違和感があります。
なぜ私は、案件を確率でまとめる作業に納得できないのか
HSPには、細かな差に気づきやすい面があるとされています。この気質だと、一件ずつの事情が細かく見えているほど、それを一本の物差しにまとめる作業に納得がいかなくなるのでしょう。まとめようとした瞬間に、当てはまらないケースが次々と浮かびます。
案件Aと案件Bを、どちらも確度70%と設定すると、その二つがまるで違う話に見えて仕方ありません。
たとえば、ある案件は、現場の担当者も運営する側も進める方向でしたが、最終の段階で法務の観点から止まりました。もう一件は、先方の組織体制が変わり、そもそも導入する必要があるのかという話に戻っています。どちらも確度70%と設定した2件ですが、止まった理由も、止まった段階も同じではありませんでした。
細かく受け取る気質と、確率で束ねる作業は、どうにも相性が悪いのだと思います。
失注の理由も、確かめようがない
決まらなかった理由を言葉にする場面でも、引っかかりの中身は同じです。関係性ができている相手なら、本当の理由を話してくれることもある一方で、失注の理由は、当たり障りのないものしか返ってこないことも同じくらいあります。
決まらなかった理由は、予算、ニーズ、法務、運用面の課題、といったところに大きく分けられるものです。分けること自体はできますが、その分け方が実際に起きたことと合っているのかは、最後まで確かめられません。次にどう提案するかはいくつも考えるものの、相手にはっきりした必要性がなければ、どれも前には進まない、というのが私の実感です。
本当の理由を推し量って次に活かすのが営業力だ、という見方も分かります。ただ、見込みの話とまったく同じで、確かめようのないものを材料にして、次の打ち手が決まっていくのが実際のところです。
自分の説明にある不確かさにも、私は気づいてしまう
失注の振り返りにも、気質の影響は大きく出ていると感じます。細かな差に気づきやすい気質だと、他人の話だけでなく自分の説明の中にある不確かさにも気づいてしまうのでしょう。振り返りの場で話しながら、「これは本当だろうか」と自分に問い続ける状態になります。
上司に伝わっている内容と、自分が本当に分かっている範囲には、ズレがあります。そのズレが見えたままなので、話し終えても落ち着きません。
数字そのものではなく、仮定から仮定を考える進め方が私とかみ合わない
見込みを立てることも、確度を置くことも、失注の理由をまとめることも、すべて確定していないものを扱い、その上にさらに先を組み立てていく作業です。私はどうやら、仮定の状況をもとに、さらに仮定の状況を考えていく進め方が得意ではないのだと思います。

深く考える気質だと、仮の数字から「もしも」が増えていく
たとえば「この案件は70%」と置いたとしましょう。すると私の頭の中では、決まった場合の段取り、決まらなかった場合の穴埋め、決まらなかったときに上司へ説明する理由、と先のことを考え始めます。
考えごとは、決まったあとの段取りで終わりません。案件としてリストに載せた時点で、次のような「やらないといけないこと」も同時に出てきます。
- 【進捗の管理】載せた以上、その案件がどこまで進んだかを追い続けないといけない
- 【関係づくり】まだ関係の浅い担当者にも、もう一歩踏み込んで話を聞きに行かないといけない
置いた数字は仮のままですが、そこから生まれる「やること」だけは先に増えていきます。
70%が事実なら、結果が出た時点で考えることは終わります。でも70%は仮の数字なので、考えたことのどれも「本当にそうなるか」を確かめられません。深く考える人ほど、この「こうなったら」「ああなったら」を途中でやめられない傾向があるようです。
- 【事実がもとなら】結果が出れば、考えたことは終わる
- 【仮の数字がもとだと】どれも確かめられず、考えごとが頭に残り続ける
- 【消耗する場面】その考えごとを抱えたまま、次の商談や会議が始まる

私は浅く考えているのではなく、むしろ処理する量が多すぎる状態です。答え合わせのできない問いを抱えたまま動き続けることに、私はいちばん消耗します。体というより、頭のほうが疲れていく感覚です。
数字で管理するやり方が悪いという話ではありません。組織を動かすには必要な仕組みですし、そこで力を発揮する人もたくさんいます。私の考え方の癖と、かみ合いにくいということです。
ノルマへの違和感は、いまも解決していない
はっきりした対処法を見つけたわけではありません。いまの法人営業でも、見込みや確度の報告と失注の振り返りは変わらずあり、いまでも、仮定を積み上げていく進め方には違和感があります。
割り当てられた数字は受け入れて、届かなかった原因を考える
事業計画に沿って、毎月の数字が割り振られてきます。そこに納得できるかどうかとは別に、受け入れて動くしかない、というのが私の割り切りです。
ただ、実績が計画から大きく外れるときは、個人の頑張りが足りないという話の手前に、計画そのものの無理や、一人では解決できない課題が隠れている場合も少なくありません。私は、数字が届かない原因を、個人の問題と組織の問題に分けて見るようにしています。原因を探し続けること自体が、組織をよくする仕事でもあるはずです。
自分だけがそう感じているのか、チームの人に確かめる
自分の意思決定に、私はあまり自信が持てません。だから、同じことを気にしている人がチームにいるか、その感覚を言葉にして話せるかどうかを、普段のやり取りのなかで確かめています。数字が届かなかったときの言い訳にするためではありません。自分ひとりの感じ方なのかどうかは、確かめておいたほうがいいと、いまは思っています。
それでも、受け止め方は変わりました。数字に弱いわけでも、努力が足りないわけでもありません。不確かなものの扱い方が、自分の気質と合わないだけです。そう切り分けられると、能力の問題として抱え込まずに済みます。
売り方が合うかどうかは、また別の軸
営業には、見込みや確度といった不確かなものを扱う軸とは別に、売り方が自分に合うかどうかという軸もあります。
金融商品を扱う部門で、成績を評価されたこともありました。押しの強さで数字が出たわけではなく、相手の迷いに気づいて、必要なものを一緒に整理していく関わり方が、そのときは結果につながったのだと思っています。
目の前の相手に向き合う売り方では、私の場合、繊細さが足を引っ張りませんでした。それでも、合う売り方があっても、数字の扱いへの違和感は消えていません。売り方そのものの話は、HSPに営業は向いてない?6回転職した私が気づいた「合わない売り方」と力が出る売り方にまとめました。
環境を変えるという選択肢もある
毎月の数字管理で、頭の疲れが抜けない状態が続いているなら、環境との相性を疑ってみてもいいと思います。
見込みや確度の報告は、営業である以上どの職場にもついてくるもので、私の場合も、いまの法人営業で変わらずあります。それでも、入り方や立ち上げ方が違うと、消耗の度合いは違う、というのが私の実感です。
- 【不動産会社でのFP相談】会社の収益の柱は不動産で、保険の売上は大きくない。目標はあったが、当時はまだ相談の運用体制を設計する段階で、数字より前段の仕組みづくりが求められるフェーズだった。会社全体としても目標との開きが大きく、個人個人の数字に焦点が当たる場面はなかった。相談の設定は不動産の営業担当がしてくれるので、FPとして相談を受ける側で入りやすく、部門として過去最高の売上も出せた(先に書いた、成績を評価された部門です)
- 【いまの法人営業】アーリーステージの会社に1人目の法人営業として入ったので、組織や事業の立ち上げから関わっていて、会社の中ではベテラン側にいられる
振り返ると、不動産会社のFP相談では、達成に必要な仕組みや運用を当時の上司へチームとして伝えていました。目標との対比で見られる場面が少なかったこともあって、自分の数字はどこまで積み上げられるかに向き合えたと思います。同じ私でも、働く環境が違えば、数字そのものは負担になりませんでした。
職場の選び方や転職の進め方は、次の記事が参考になると思います。
- 続けられる職場の条件は、HSPが営業職で続けられる職場を選ぶ3つのポイントにまとめています
- 転職も視野に入れるなら、HSPに向いている転職・仕事探し完全ガイドに進め方の全体像があります
- 消耗が抜けないときは、HSPが仕事で疲れ果てる理由と向き合い方もあわせてどうぞ
気持ちの落ち込みが続いて、日常生活にも影響が出ているようなら、一人で抱え込まず、厚生労働省の「こころの耳」など、公の相談窓口も頼ってみてください。
まとめ
- 【消耗の原因】数字の能力不足ではなく、不確かなものを軸に話が進む流れへの違和感
- 【見込み】引っかかりは、見込みを立てているその時点からある
- 【確度】50%と70%の差は、正直なところ分からない
- 【失注理由】確かめようのないものが、次の打ち手の材料になる
- 【反対側の見方】精度を上げるのは営業力であり、組織として整えるべき仕事でもある
- 【それでも残るもの】仮定を積み上げていく進め方への違和感は、いまも消えない
- 【いまのやり方】割り当てられた数字は受け入れて、届かなかった原因を個人の問題と組織の問題に分けて考える。同じことを気にしている人がチームにいるかも確かめる
- 【気質との関係】深く考えるほど、仮の数字から「こうなったら」を考え始めて、途中でやめられない
- 【別の軸】売り方が合うかどうかは、数字の扱いとは別の話
数字に弱い自分を責める前に、不確かなものの扱い方と売り方のどちらが自分とかみ合っていないのかを、見分けてみてください。切り分けができると、次に選ぶ環境の基準も見えてきます。


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