自分から電話をかけようとすると、番号を押す手が止まってしまいます。話す内容よりも先に「この会話を周りに聞かれている」ことが気になって、うまく切り出せません。営業らしく振る舞う自分の声を同僚や上司に聞かれるのが、どうにも落ち着かなくなります。

- 自分からかける営業の電話に、身構えてしまうHSPの方
- うまくいかない自分を見られたり、指摘されたりすると、否定された気がする方
- 「電話くらいで気疲れする自分は弱いのか」と感じている方
かつての私が、まさにそうでした。私はHSP気質で、これまで6回転職し、長く営業を経験しています。ただ、どんな電話もつらかったわけではありません。気心の知れた相手や、自信のある用件なら、むしろ落ち着いて話せました。
いま振り返ると、意外な発見があります。神経を使ったのは話の相手そのものではなく、自分から切り出すタイプの電話のときでした。この記事では、HSPが営業電話を苦手に感じる理由と、私が少し楽になれた工夫をお伝えします。
HSPの私が営業電話を苦手に感じる理由
電話が苦手なのは、気質の問題であって、能力や慣れの不足ではありません。なお、HSP(Highly Sensitive Person)とは、提唱者のエレイン・アーロン博士が示した、生まれつき感受性が強く刺激を深く受け取りやすい気質を指します(参考:エレイン・アーロン博士の公式サイト(英語))。ただし、すべての電話が等しくつらいわけではなく、私の場合は電話の種類によって負担が大きく変わりました。
かかってくる電話より、”かける”電話のほうがしんどい
電話が鳴ること自体に、特に身構えていたわけではありません。きつかったのは、自分から提案を切り出す電話でした。
- 相手の都合を選ばずに切り出す申し訳なさ
- 断られる前提で数をかける気の重さ
受け身で応じる電話とは、緊張の質がまるで違います。
声だけのやりとりで、間まで深く受け取る
電話は、相手の情報が声にしかありません。HSPはその限られた手がかりから、機嫌や間を無意識に読み取ろうとします。ほんの少しの沈黙でも「間が悪かったかな」と気になって、そちらに気を取られがちでした。情報が少ないぶん、想像で気を使いすぎてしまうのだと思います。
内容次第で負担が変わる
気心の知れた相手や、自信のある用件なら、落ち着いて話せました。神経を使ったのは、慣れない提案や、うまく言えるか不安な用件のときが多かったように思います。大事なのは「電話そのもの」ではなく「何を、どんな状況で話すか」でした。
本当に苦しかったのは”見られるストレス”
ここが、私にとって一番重要な視点です。電話が苦手な理由を、ずっと「電話相手に向けて」だと思い込んでいました。しかし、改めて考えてみると、ストレスの要因は別のところにありました。
静かなオフィスで、同僚に聞かれている感覚
いちばん体がこわばったのは、静まり返ったオフィスで電話をかける瞬間でした。「まわりに聞かれている」「うまく話せなかったら、どう思われるだろう」。そんな思いが先に立って、相手に集中する前に、背中に張りついた視線のほうが気になってしまいます。
つまり私が本当に恐れていたのは、電話の向こうのお客さまではなく「社内で見られていること」でした。視線にさらされる場面と電話が重なったとき、苦しさが一気に増していたのだと思います。
とくに気恥ずかしかったのは、次のような場面です。
- “営業らしく振る舞う自分”の声を聞かれること:作った明るさや声のトーンを同僚に聞かれていると思うと、中身に入る前に気恥ずかしさが先に立つ
- 自信のある会話なら、聞かれても平気:問題は相手ではなく、”うまく言えるか不安な自分”を見られる状況そのもの
皮肉なのは、電話でお客さまの声の調子や間を読み取ろうとする感覚と、背中の同僚の視線を拾ってしまう感覚が、たぶん同じものだということです。相手を深く読もうとする力が、そのまま「自分がどう見られているか」への過敏さになります。片方だけを消すことは、私にはできませんでした。
指摘されると、自分を否定された気になる
うまくいっていない自分を見られること、「あとで何か指摘されるかもしれない」という予感が、とにかく苦手でした。
私はもともと、人から指摘されること自体が苦手なのだと思います。人格を否定するきつい言葉でなくても、何かを指摘されると、なぜか自分そのものを否定されたような気持ちになってしまいます。そのため、うまく話せない場面を見られ、あとで何か言われるかもしれない電話は、二重に気が重く感じられました。
電話する環境を変えることが重要
「電話そのものを克服しよう」とするより、「見られている状況をどう減らすか」に目を向けたほうが、私にはずっと効果的でした。
電話が少し楽になった、私の工夫
完全に平気になったわけではありません。それでも、自分の苦手な側面を認めつつ、いくつか工夫をすることで、負担はだいぶ軽くなりました。
- 一人になれる場所でかける:会議室や電話ブースで”見られている感覚”を物理的に減らす(私にはこれが一番効果的で、今でも行っています)
- 要点をメモしてからかける:話す順番と、断り文句への返しを一枚に。頭が真っ白でも立て直せる
- 時間帯を選ぶ:静まり返る時間を避け、少しざわつく時間に。物音があるほうが視線がやわらぐ
小さなことばかりですが、私に効いたのは「電話が苦手な自分を直す」のではなく「力が発揮しやすい状況をつくる」という考え方でした。気合いで慣れようとしていた頃より、ずっと現実的に負担が減りました。
それでも電話中心の営業が合わないと感じたら
工夫をしても、一日中、売り込みの電話をかけ続けて消耗しきってしまう。そんな職場なら、無理に自分を合わせ続ける必要はありません。
同じ営業でも、電話の比率は会社や職種で大きく違います。
- 反響営業:お客さまから問い合わせが来る。いきなり冷たく断られる場面が少ない
- ルート営業:関係のできた既存客を回る。電話の緊張感が違う
- メール・チャット中心/在宅:落ち着いて対応できる環境もある
私自身、電話の少ない環境に移ってからは、同じ営業でもずいぶん気持ちが軽くなりました。苦手を根性で克服するより、負担の少ない場所を選ぶほうが、結果的に長く働けたように思います。
「そもそも営業に向いていないのでは」と感じる方は、まずつらさの正体を切り分けるところからが大切です。
環境を変えたいと感じたら、HSPの気質を理解して求人を紹介してくれる転職エージェントに相談すると、電話の負担が少ない仕事も一緒に探してもらえます。また、気持ちの落ち込みが続いて日常にも響くようなら、一人で抱え込まず、厚生労働省の働く人向け相談サイト「こころの耳」のような公的な窓口も頼ってみてください。
まとめ
- 電話が苦手なのは気質のせいで、弱さや慣れ不足ではない
- つらさは電話そのものより、”何を・どんな状況で話すか”で変わることがある
- 本当の負担は、うまくいかない自分を社内で見られ、指摘されることへの不安かもしれない
- 相手を深く読む力と、見られることへの過敏さは、同じ感受性の裏表
- 「克服」より「見られにくい状況づくり」で楽になれる
- 消耗し続けるなら、架電中心ではない働き方に変える道もある
電話が苦手な自分を責めず、何が苦手なのかを整理することが大切だと思います。気にしすぎてしまう点は繊細さの裏返しでもあり、その感受性が活きる場所もあるはずです。今回お伝えした工夫も、人によって合う合わないがあります。よければ参考にしてみてください。

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