- 入院の際、治療費以外にかかる費用は何があるの?
- 入院を経験して想定しておくと良い注意すべきポイントは?
- 民間の医療保険の必要性について確認したい
このようなお悩みに対し、実体験をもとに解説します。
先日、虫垂(盲腸)切除のために人生初の入院(5日間)をしました。虫垂炎の再発が2回ほどあり、今後再発しないよう炎症が落ち着いてから切除した、という経緯です。
過去、保険の仕事に携わってきた中で多くの給付金対応を行なってきましたが、当事者にならないとわからないことも多かったことを改めて実感しました。
今回は、実際入院してみて感じたことを中心に
- 実際の入院でかかった治療費以外の費用
- 入院時に想定しておくべき費用における注意点
- 民間の医療保険について感じたこと
についてお伝えしていきます。
実際の入院でかかった治療費以外の費用のまとめ(期間5日間)
入院において治療費以外でかかった費用についてまとめてみました。
項目 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
パジャマ購入×2着 | 約6,000円 | 入院中の着衣。病院でレンタルも可能 |
タクシー移動代 | 約5,000円 | 病院までの移動交通費 ※入院前後の外来含 |
食事代(460円/食)×7食 | 3,220円 | 病院での食事に関する自己負担額 |
スリッパ | 150円 | 使い捨てのものとして100円均一で購入 |
テレビカード(1,000円/14h) | 0円 | PCやスマホで十分だったため購入せず |
冷蔵庫 | 0円 | 飲みものは常温保存 |
アメニティ系購入 | 約1,000円 | シャンプーリンスやコップ、ティッシュ等の一式 |
雑費(飲み物やその他備品) | 約1,500円 | 飲み物や間食用 |
トータルで13,000円−14,000円程度と考えるとかなり少額に収まった印象です。
なお、治療費は高額療養費の関係で健康保険適用内の治療であれば自己負担上限額が決まっており、年収によって区分され、次のようなイメージとなります。(69歳以下の場合)
- 約1,160万円〜【252,000円+数千円〜数万円程度】
- 約770万円~約1,160万円【167,400円+数千円〜数万円程度】
- 約370万円~約770万円【80,100円+数千円〜数万円程度】
- 約156万~約370万円【57,600円】
- 住民税非課税者【35,400円】
※70歳以上の場合、4と5はもう少々細分化されます。詳細は「厚生労働省のHP」を確認
自身の年収をベースに想定しておけば大きくは乖離しないのである程度計算できるところですね。
衣類について
衣類は「ねまき」か「前が開くパジャマ」を持ってきてほしい、ということでした。
僕が持っているのはTシャツタイプやスウェットが主で、前が開く衣類のねまきがないため、今回パジャマを2着購入しました。
なお、病院でレンタルも可能で、タオルの有無で差がありますが、300−500円/日ほどです。
そのため、レンタルを選択していれば、最大2,500円程度で済んでいたことも補足しておきます。
食事代
入院時の食事代は1食460円でした。
実は健康保険の「入院時食事療養費」という制度により標準負担額が決まっており、条件ごとで全国一律です。
一般の方 | 1食につき 460円 |
難病患者、小児慢性特定疾患患者の方(住民税非課税世帯を除く) | 1食につき 260円 |
住民税非課税世帯の方 | 1食につき 210円 |
住民税非課税世帯の方で過去1年間の入院日数が90日を超えている場合 | 1食につき 160円 |
住民税非課税世帯に属しかつ所得が一定基準に満たない70才以上の高齢受給者 | 1食につき 100円 |
なお「一般の方」は段階的に自己負担額が上がってきた経緯があり、現在の460円になっています。
平成28年3月31日まで | 平成28年4月1日〜 | 平成30年4月1日〜 | |
①一般の方 | 260円 | 360円 | 460円 |
②住民税非課税世帯 | 210円 | 引き上げなし | 引き上げなし |
③70歳以上で特に低所得の方など | 100円 | 引き上げなし | 引き上げなし |
費用面で不安に思った注意すべきポイント3選
実際はかからなかったですが、事前に不安に感じた、注意すべきポイントについて3つ紹介します。
当日までわからない!状況次第で発生する第2候補で選んだ部屋の差額ベッド代
差額ベッド代とは、病室のクオリティを上げることによって生じる部屋代です。
わかりやすいところが4−8人等の大部屋ではなく「個室」ですが、僕のお世話になった病院では一般病棟の病室代は以下のようになってました。(病院を特定されないよう、おおよその金額で記載しています)
種別 | 金額(1日ごと) | 設備 |
---|---|---|
個室2 | 約38,000円 | シャワー・トイレ |
個室3 | 約28,000円 | トイレ(室内) |
4人部屋 | 約8,000円 | トイレ |
4人部屋(無差額) | 0円 | トイレ(共同)/テレビ・冷蔵庫(有料) |
個室だけでなく、4人部屋でも室内トイレの部屋になるだけで1日約8,000円の負担が生じます。
上記以上は個室病棟となり、約50,000円〜約110,000円ほどの費用です。
住友生命が公表している差額ベッド代の平均が以下の金額なので、今回お世話になった病院とは乖離があり、平均値はやはり平均で実態とは異なると実感しました。
1人部屋 | 7,097円 |
2人部屋 | 3,099円 |
3人部屋 | 2,853円 |
4人部屋 | 2,514円 |
平均 | 6,258円 |
自分自身がかかる可能性の高い病院の差額ベッド代は調べておくと良いでしょう。
差額ベッド代は健康保険適用外で全額実費負担
治療費と異なり、差額ベッド代は健康保険の適用を受けないため、全額自己負担で支払いをしなければいけません。
数日ならまだしも、数週間、数ヶ月になると相当な額になってしまいます。
第2希望まで選択する必要がある(今回お世話になった病院の場合)
下記のようなケースでは差額ベッド代を支払う必要がありません。
- 患者の意思に関わらず病院側管理の都合等により個室へ入院した場合
- 患者本人の「治療上の必要」により個室へ入院させる場合
- 差額ベッド代が必要な個室へ入院することに、患者の同意が得られていない場合
保険に携わっていた人間として、上記は僕も認識していましたが、病室の空きは前日まで分からないため、万が一第1希望の病室に入れない場合に第2希望まで聞いている、と説明されました。
僕の場合、極力費用は抑えたかったので
- 第1希望:差額ベッド代が発生しない0円の部屋
- 第2希望:差額ベッド代が発生する8,000円/日の部屋(4人部屋)
といたしました。
第2希望の条件に同意しなければ希望のタイミングで治療を受けられない
病室の希望を出す際「第1希望とならない場合は入院日を変更する」という選択肢もありました。
僕の場合、急ぐ手術でもないので体調面では多少日程の融通はきかせられます。しかし、その日に向けて仕事の引き継ぎや諸々調整しているので、前日になって希望の病室入れないので日程変えます、とは簡単に言えません。
結局、第2希望になっても「受け入れることの同意」をしないと希望通り手術をうけられないので、望んでなくても差額ベッド代を支払う可能性が残っていたことは一抹の不安材料でした。
結果、第1希望で入れたのでよかったですが、半強制的に差額ベッド代がかかる可能性がある、という点は、押さえておくと良いかと思います。
月またぎの入院にならないような入院日の調整(高額療養費の関係)
高額療養費は月をまたいだ入院をすると自己負担額が増える、ということはご存じでしょうか。
例えば同じ5日間の入院でも
- 10月27日〜10月31日
- 10月29日〜11月2日
では、自己負担の金額が変わります。
なぜかというと、高額療養費の上限額の適用は1ヶ月単位だからです。
100万円医療費がかかる場合の比較
- 医療費:100万円(健康保険適用後は3割負担で30万負担)
- 高額療養費区分:年収約370万円~約770万円『 80,100円+(医療費−267,000円)×1%』
こちらの条件で入院日の違いが自己負担額にどう影響するか見てみます。
◉10月27日〜31日の場合
80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%=87,430円
◉10月29日〜11月2日の場合
月をまたぐ場合「各月にいくら医療費が掛かったか」で大きく変わりますが、仮に9月に70万、10月30万円としてみます。
- 9月分:80,100円+(700,000円−267,000円)×1%=84,430円
- 10月分:80,100円+(300,000円−267,000円)×1%=80,430円
- 84,430円+80,430円=164,860円
月をまたぐと約2倍かかる可能性がある
- 10月27日〜31日の場合:87,430円
- 10月29日〜11月2日の場合:164,860円
上記のように、月をまたぐだけで2倍近く自己負担金額が増える可能性があります。
自分の場合、高額療養費があれば約9万くらいだから大丈夫!と思っていても日程次第で想定外の費用がかかる可能性があるので、注意が必要です。
年収区分がよりあがると、+約16万円、+約25万円と影響の額も大きくなります。
僕も月内に収まるように日程が取れるか、日程調整するまでは心配でした。
高額療養費や民間医療保険の給付金受け取りまでの立て替え払い
高額療養費や自身で加入している医療保険で給付される見込みがあっても、給付までは一旦立て替えて支払いしなければいけません。
高額療養費の限度額適用認定
高額療養費は、健保組合等に事前申請し、発行された証明書を医療機関にあらかじめ提出することで、上限額の適用を受けた状態で請求を受け取ることができます。
事前に健保組合等に申請を出すと、限度額適用認定証という証書を受け取れ、この認定証を医療機関の受診時に提出すれば完了です。
申請には1週間程度かかるケースが多いので、前もって計画的に進めることが必要です。
民間医療保険の医療機関への直接払い
民間の医療保険でも医療機関への直接払いというものをおこなっている保険会社や商品があります。
主なのは、先進医療(全額自己負担)のうち、技術料が特に高額となる「陽子線治療」および「重粒子線治療」の治療費についてのため、ケースとしては多くないかもしれません。
また、医療機関も保険会社が提携している先に限りなので、限定的ですが頭の片隅に入れておいても損はないでしょう。
保険の元プロが入院して感じる民間医療保険の捉え方について
保険に携わっていた身として、医療保険の在り方については改めて考えさせられました。
医療保険はほぼ損する商品である、というのは以前からお客さまにも伝えていた内容のため、損得ではない点で感じた部分を3点紹介します。
金銭的な迷いなく入院手術の決断を早くできた
虫垂炎という比較的簡単な手術だったこと(そこまで高額ではない)と、手術を選択するか自己判断だったということもありますが、入院手術を行うにあたり金銭的な面が弊害で悩むことがなかったです。
根底に「医療保険がある」というのは手術に踏み切る判断のスピードを良い意味で速くしてくれました。
加入している医療保険を見直すことの重要性
見直しというと「切り替える・加入し直す」ことを想定される方も多いかと思いますが、大切なのは保障内容をきちんと把握していざというときの齟齬をなくす、ことです。
僕は元々業界のプロなので、さすがに大筋理解はしていますが、加入後何年も証券をみていなかったので、細かい部分含めて「いくらもらえるのか」という部分は気になりました。
結果論ですが
- 「手術給付金もっと上げておけばよかったな」
- 「支払い年数長くしてでも保障内容高めておけばよかったな」
- 「この保障より、こっちを優先しておけばよかったな」
など、細かいところでいくつか思ったのも事実です。
全てに万能な保障は不可能ですが、内容をきちんと自身で理解して「なぜこの保障内容で加入しているのか」という点は定期的に見返しておくことは大切です。
その理解がないと、いざという時に「こんなはずではなかった」となりかねないですし、後悔した時には保険が見直ししづらい身体になっています。
貯蓄を削らないことが精神的安定を生む
結果的に僕の場合、支払った治療費は給付金の半分くらいでした。お伝えの通り、医療保険は生涯で見るとほぼ損します。
しかし、この入院手術時の一時的な側面で見ると、貯蓄から捻出した、という感覚はありません。
あくまで給付金を受け取った、というプラスの印象です。
考え方は人それぞれですが、入院手術という非日常の大きな不安が襲ってくる中で「金銭的な不安が軽減される」ことは考えていた以上に大きな要素ではないか、と身に染みて感じました。
医療保険に加入していなかった場合、その部分の資金を医療費貯金できてたのか、というとFPの僕でも自信ありません。毎月の保険料分の費用を運用に回していて、今暴落のタイミングだったら取り崩しもできません。
金銭的な面で治療を諦める、またはネガティブになる、ではなく保険があるからプラスに取り組める、という精神状況は大きな要素でしょう。
これこそが、医療保険の価値だなと小さな経験ですが身を持って感じた部分です。
【まとめ】入院時の医療費以外にかかる費用は?実際の入院経験をもとに事例解説!
今回、入院を経験して思ったことは次の3点です。
- ほぼ想定通りの金額で大きな費用負担が生じなくてよかった
- 一方、差額ベッド代など、治療費とは別の想定外費用はかかる可能性が十分にある
- 医療保険の必要性を感じるのであれば、定期的な内容チェックは重要
医療保険について、ぜひこの機会に一度内容確認を含めた見直しをおすすめします。とくに、自分がどこの病院かかる可能性が高いのか、というところも見ておくとベストですね。
ご参考にしてください!
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