この記事は、2020年12月に「住宅ローン控除が見直されるらしい」という報道をもとに書いたものを、2026年の制度に合わせて全面的に書き直したものです。

- 住宅ローン控除が今どうなっているのか、最新の制度を知りたい方
- 「控除があるから」と借り方を決めていいのか迷っている方
- 制度が変わる前に急いで買うべきか、判断の軸がほしい方
当時の報道にあった「年末残高の1%か、支払った利息の少ないほう」という案は採用されませんでした。実際には2022年に控除率が1%から0.7%へ引き下げられる形で決着し、2026年の改正で2030年12月末の入居分まで制度が延長されています。
2020年当時と比べて変わった点は、次の5つです。
| 項目 | 2020年当時 | 現行(2026年時点) |
|---|---|---|
| 控除率 | 年末残高の1% | 0.7% |
| 控除期間 | 新築10年(特例で13年) | 新築13年。既存住宅は10年(性能が高い既存住宅は13年) |
| 床面積 | 50㎡以上 | 40㎡以上(所得1,000万円超などは50㎡のまま) |
| 省エネ性能 | 要件なし | 要件に追加。省エネ基準に適合しない新築は対象外 |
| 所得要件 | 合計所得3,000万円以下 | 2,000万円以下 |
住宅購入のライフプラン相談を受けてきたFPとして、今の制度と、そのうえでの借り方の考え方を書きます。
この記事のポイント
【制度】控除率0.7%・2030年入居まで。借入限度額は住宅の性能と世帯で決まり、戻る額は自分の税額が天井
【借り方】控除は年末残高で決まり、利息は関係ない。金利・団信は控除で決めない。繰り上げ返済は金利0.7%が分かれ目、ただし生活防衛資金が先
【時期と順番】制度が2030年まで延びたので、急いで買う理由は薄い。控除の計算より先に、家計が回るかをライフプランで確かめる

制度の数字は国土交通省のQ&A(2026年7月更新)で確認しています。
「控除で得をする借り方」より「控除がなくても無理のない借り方」が軸です。
住宅ローン控除の今の制度(2026年入居から)
住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)は、年末のローン残高に控除率をかけた額を所得税から差し引き、引ききれない分を翌年の住民税から差し引く制度です。
基本の条件を挙げます。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 控除率 | 0.7%(住宅の種類にかかわらず一律) |
| 控除期間 | 新築・買取再販は13年。既存住宅(中古)は10年で、認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合の既存住宅は2026年入居から13年 |
| 入居期限 | 2030年12月31日まで |
| 所得要件 | 合計所得金額が2,000万円以下の年に適用(ペアローンは1人ずつ判定) |
| 床面積 | 40㎡以上。ただし合計所得1,000万円超の方、または子育て世帯等の上乗せを受ける方は50㎡以上 |
借入限度額は、住宅の性能と世帯で決まる
控除の対象になる残高には上限(借入限度額)があり、住宅の性能と世帯で決まります。2026・2027年入居の新築・買取再販は、次の図のとおりです。

2028〜2030年入居も、認定住宅とZEH水準は同じ額です。省エネ基準適合住宅の新築だけが外れます(この章の最後のH3で書きます)。
既存住宅(中古)は、省エネ基準に適合しない住宅でも2,000万円・10年で対象になる
既存住宅(中古)の借入限度額は、次のとおりです。
| 住宅の種類 | 一般の世帯 | 子育て世帯・若者夫婦世帯 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅/ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 2,000万円 | 3,000万円 | 13年 |
| その他の住宅(省エネ基準に適合しない) | 2,000万円 | 2,000万円 | 10年 |
新築では対象外の「その他の住宅」が、中古では対象に入る点が違いです。
上乗せの対象になる「子育て世帯・若者夫婦世帯」は、19歳未満の扶養親族がいるか、夫婦のどちらかが40歳未満かで判定
「子育て世帯・若者夫婦世帯」とは
【子育て世帯】19歳未満の扶養親族がいる世帯(ひとり親でも、19歳未満の扶養親族がいれば対象)
【若者夫婦世帯】夫婦のどちらかが40歳未満の世帯
判定は、入居した年の12月31日時点です。
省エネ性能が要件になり、2028年から対象がさらに絞られる
2024年以降の入居では、省エネ基準に適合しない新築は控除の対象外です。
さらに、省エネ基準適合住宅(断熱等級4・一次エネ等級4)の新築は、2028年以降の入居から控除の対象外になります。
2028年以降の入居でも、省エネ基準適合住宅の新築が対象になる経過措置
【建築確認】2027年末までに建築確認を受けた住宅
【建築】2028年6月30日までに建築された住宅
どちらかに当てはまれば、2,000万円・10年で対象です。
2028年以降の入居では、土砂災害などの災害レッドゾーンに建つ新築住宅も対象外です。
控除で戻る額は、枠ではなく自分の税額が天井
控除額は「年末残高(借入限度額まで)×0.7%」で計算し、控除期間の年数分受けられます。単純に上限いっぱいで計算した結果が、次の2つです。
| 住宅と世帯 | 1年の控除額 | 13年の合計(最大) |
|---|---|---|
| 認定住宅・子育て世帯等(限度額5,000万円) | 5,000万円×0.7%=35万円 | 455万円 |
| 省エネ基準適合住宅・一般の世帯(限度額2,000万円) | 2,000万円×0.7%=14万円 | 182万円 |
ただし、この額は上限です。実際は次の2つで小さくなります。
- 【残高】返済で毎年減る=2年目以降の控除額も減っていく
- 【税額】自分が納めている所得税・住民税の範囲まで
所得税から引ききれない分は翌年の住民税からも差し引かれますが、住民税からの控除は前年の課税所得の5%・最高97,500円までです(2030年入居分まで同じ)。
出典:荒川区「住民税住宅借入金等特別税額控除」
所得税が年8万円の方は、35万円の枠があっても戻るのは所得税8万円+住民税最高97,500円まで
たとえば、納めている所得税が年8万円の方を考えてみます。35万円の枠があっても、所得税からは8万円までしか引けません。残り27万円のうち、住民税から引けるのも最高97,500円にとどまります。
「借入限度額まで借りれば得」ではなく、自分の税額が天井です。
借り方への影響|控除は「残高」で決まり、利息は関係ない
今の控除は年末残高×0.7%だけで決まり、支払った利息の額は関係ありません。支払利息を基準にする案は採用されなかったので、次の3つのような、利息の多い借り方をしても、控除は増えないわけです。
- 【保証料】金利上乗せ型
- 【団信】特約の金利上乗せ
- 【固定金利】変動より高い金利
控除を理由に、金利や商品を選ぶ必要はない
控除額は金利に左右されないので、控除を理由に金利や商品を選ぶ必要はありません。固定か変動かは、控除ではなく「金利上昇にどこまで耐えられるか」で決める話です。
- 【固定か変動か】住宅ローン金利選択のポイント3選!固定と変動の考え方
- 【複数銀行の金利比較】住宅ローン無料一括比較『モゲチェック』に実際に登録したFPの評価
繰り上げ返済の損得は、金利が0.7%より高いか低いかで変わる
控除期間中に繰り上げ返済をすると、残高が減るので控除額も減ります。分かれ目は借入金利です。
- 【金利が0.7%より高い】減る利息のほうが減る控除より大きく、控除期間中でも繰り上げ返済の効果がある
- 【金利が0.7%より低い】減る控除のほうが大きくなりやすく、控除期間が終わってからまとめて返すほうが有利になりやすい

0.7%の分かれ目が当てはまらない場合
【残高が限度額超】超えている分を返しても、控除額は変わらない
【税額が枠より小さい】控除は税額で頭打ちなので、残高を少し減らしても控除額は変わらない
どちらも金利にかかわらず、繰り上げ返済で減る利息がそのまま効果になります。
0.7%の比較より、生活防衛資金を残すことが先
0.7%の比較は、損得だけの話です。手元の現金が薄くなるリスクや、「早く返して身軽になりたい」という気持ちは、この計算には出てきません。
私は、0.7%の比較より、繰り上げ返済は生活防衛資金(収入が止まっても数か月は暮らせるお金)を残したうえでの余りから出すことのほうが大事だと考えています。
団信の特約は、控除と切り離して決める
3大疾病・7大疾病などの特約付き団信は、多くが金利上乗せの形で保険料を払う仕組みです。特約を付けても控除額は増えないので、特約は「保障として必要か」だけで判断することになります。
すでに医療保険や収入保障保険に入っている方は、保障が重なっていないかを先に確認したほうがよいでしょう。
ペアローンは、控除も所得要件も1人ずつ
ペアローンや連帯債務の場合、控除は1人ずつ受けられ、所得要件(2,000万円以下)も1人ずつ判定されます。
夫婦で借りるなら、控除の枠より先に「どちらかの収入が止まっても返せるか」を確認することをすすめます。
制度が2030年まで延びたので、変わる前に急いで買う理由は薄い
「制度が変わる前に買ったほうが得?」という声は、以前からあるものです。2026年の今は、制度が2030年入居まで延長されたので、控除のために急ぐ必要は薄くなりました。
一方で、最初の章で書いた2028年以降の条件だけは別です。省エネ基準適合住宅の新築は2028年以降の入居で対象外になるので、控除の枠は次のどれを選ぶかで変わってきます。
- 【住宅の性能】ZEH水準以上の住宅を選ぶ
- 【入居時期】2027年中に入居する
- 【経過措置】2027年末までに建築確認を受ければ、2028年以降の入居でも2,000万円・10年で対象
急ぐ必要はないものの、建てる住宅の性能と入居時期の組み合わせは、早めに確認しておく価値があるというのが私の考えです。
控除の計算より先に、家計が回るかをライフプランで確かめる
急ぐかどうか以前に、住宅購入は人生でいちばん大きな買い物です。控除の側面だけで決める話ではありません。
相談を受けた500世帯の8割は、そのままでは家計が回らない計画を立てていた
私はFPとして住宅購入時のライフプラン相談を500世帯以上受けてきましたが、そのうち8割は、そのまま進めると将来どこかで家計が回らなくなる計画でした。
あくまで見込みの計画なので「絶対に破綻する」という話ではありません。
ただ、家計の先行きを知らないまま進めると、気づいたときには苦しい時期に入っていることがあります。
家の予算より、日々の家計の見直しのほうが、回るかどうかを左右した世帯が多かった
家の予算そのものより、日々の家計の見直しのほうが、家計が回るかどうかを左右するケースが多くありました。将来の計画(ライフプラン)と今の家計(家計簿)のズレを知ることが、控除の計算より先です。
ライフプランは、無料のシミュレーションを使えば自分でも作れます。
- 【作り方】【入力編】自分で出来るライフプラン表作成方法
- 【住宅購入で最低限入れる項目】住宅購入用のライフプランで必要な項目5選と費用の目安
まとめ:住宅ローン控除の今と、借り方の軸
制度の要点は次の4つです。
- 【控除率・期間】控除率0.7%、2030年12月末の入居まで延長。新築13年・既存10年(性能が高い既存住宅は13年)
- 【限度額】住宅の性能と世帯で決まる(子育て世帯・若者夫婦世帯は上乗せ)
- 【省エネ】2024年以降の新築は省エネ基準が必須。2028年以降は省エネ基準適合住宅の新築も対象外
- 【戻る額】自分の所得税・住民税が天井
借り方については、次のように考えています。
- 【金利・商品】控除を理由に選ばない。固定か変動かは金利上昇への耐性で決める
- 【繰り上げ返済】金利0.7%が分かれ目。ただし生活防衛資金が先
- 【団信・ペアローン】控除ではなく、保障の要否と返せるかで決める
控除は「使えるなら使う」もので、借り方の理由にするものではありません。控除がなくても無理なく返せる借り方を、ライフプランで確かめてから決めてもらえたらと思います。

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